ブラックブック
というわけで見ました。クリスマス・イブ一人映画祭りの締めの一本。
ポール・バーホーベンの「ブラックブック」
第二次世界大戦下、運命に翻弄され続けた女性のお話です。
以下ネタバレ注意ね。
(ところで映画感想で監督について言及すると、ツウっぽく見えるよね。みえない?そうだね)
第二次大戦ものは割といろいろあるし、多少は見ていますかな。
「プライベート・ライアン」「フューリー」「ワルキューレ」など。
自分が覚えていないだけで、多分もうちょっと見ていると思います。
しかし、自分がいつも見ているのは「兵士を通した戦争」なんですなっていうのを感じた。
前述の映画はどれも、兵士、もしくは軍隊を通して戦争を描く作品。軍集団の中で、もしくは銃を持った一兵卒が、殺し殺される地獄の有様を、もしくは別の光景をフィルムを通して映像にしている。
けれど、ブラックブックは全く違う。
そも、これは完全にフィクションで、第二次大戦を舞台としか使っていない。第二次世界大戦と言う、ナチスの絶対悪がどうしても必要だったのだろう。
同時に、戦後によって急に立場が入れ替わる、そんなギミックも必要なのだ。
それらを利用した、ミステリー(サスペンスか?)がこの作品だ。
ユダヤの女性ラヘルはナチの追手から逃れるためにとある人物の助けを借りる。しかし、その逃亡の最中、ナチスの待ち伏せに会い家族友人を、そして財産を失う。
敵の手を逃れた彼女はレジスタンスの仲間に入る。レジスタンスとして活動している最中、リーダーの息子を含む仲間がナチスに囚われてしまう。
とある事情からナチス将校と知り合うきっかけのあったラヘルはユダヤという身分を偽ってナチスに潜入する。
そして救出作戦は決行される……だが、それは罠だった。
彼女の逃亡劇が始まり、そして、戦争が終わっても真相を追い続ける。
誰が犯人かまでいうのはヤボですが、最後まで油断できない展開にハラハラしました。
なによりも、ラヘルの境遇に胸が痛む。
良かれと思ってやっていたのに、上手くいかない。それどころか、愛する人まで失ってしまう。
それでも彼女は最後まであきらめなかった。必死に生き続けたなあ、と感じます。
そんなふうに感じられるほどに、この映画に出てきた人々は生き生きしていた。戦争という過酷な時代の中を、精一杯駆け抜けていた。役者の演技もさることながら、キャラクターたちのキャラ付け、そういったところが本当に面白かったです。
それはナチス側、レジスタンス側だけじゃない。フランス開放の時の、ナチス側だった人々への扱い。黒が白に、白が黒に変わってしまう瞬間。誰しもがその時を必死に生きていたのに、正しさを信じていたのに。次の朝には自分の信じていた白は悪に変わってしまう。
ポール・バーホーベン監督のwikipediaでは、「彼の作品は善悪の境界線を描き~」みたいな記述がありまして、まさにその通りかと。
安っぽい引用ですが、しかし、ラヘルを通して、ユダヤ人として、レジスタンスとして、ユダヤ協力者として、逃亡者として、その視線から見る戦争が、次々と色を変える様は鮮やかに写ります。
第二次大戦下だけど、第二次大戦のお話じゃない。巻き込まれ系ヒロインのサスペンス映画。なかなか楽しめました。
最後、ラヘルは己の家族を得ることができた。しかし、夕暮れの中、やってくる兵士。飛行機のエンジン音。スエズ動乱直前のイスラエル。彼女の苦難はまだ続くのかもしれない。
果たして、いつになれば彼女に平和は訪れるのだろうか。
一味変わった第二次大戦下映画、リア充も爆発しててお勧めです。
あ、エログロ結構あるから気を付けてね!乳首どころか脳みそも飛び出るよ!