まるでテーマパークに来たみたいだぜ(新国立劇場)
昨日、友人の紹介でオペラ「アイーダ」を見てきました。
今まで演劇やミュージカルは見てきたのですが、オペラははじめてです。
オペラと言われた時、「どうせ御ハイソなコンテンツで庶民な自分には遠い世界のお話でしょう」と思っていました。
逆にこうやって誘われなければ決して見ることのないコンテンツでもあるわけで。
なので社会勉強と思っていってきました。
結論から言います。
めちゃくちゃ面白いです!!
多寡をくくっていました。偏見で物事を判断するのはよくありませんね。
今日は初オペラの楽しさを語っていきます。
アイーダそのものの感想は、またそのうちに。
オペラはテーマパーク
今回、初めてオペラを鑑賞して思ったのは
「オペラはテーマパークだ」
ということです。
いや、アトラクションがあるわけでもなく、飲食店もない。
あるのは精々パレードを遠めから見ているだけじゃないか。
そんなふうに思われるかもしれませんが、実はそうではない。
全くそうではなかった。
本当に偏見だけでオペラを見ていました。
オペラはその規模、豪奢さ、そして質においてもテーマパークなのです。
最高級の演劇
オペラはまず高い。
一番安いC席でも1万弱。一番高いと3万近くもする。
下北の小劇場なら1~2千円程度、ある程度大きい劇場なら5千円前後といったところだろうか。
もちろん帝国劇場とかの演劇ならば同じぐらいするものもあるが、やはり演劇関連では最高金額クラスだろう。
しかし、ただ高いわけではない。
演劇は全4時間、4幕で構成させれている。
そう考えれば、1幕単位2500円程度だ。
ちょっとお得、かもしれないか……?
だが、実際見てみるとそれだけの価値がある。
いや、それ以上だ。
まずキャストは世界的にトップクラスの実力を持っている人たちだけ。
基本的には大役や中役程度しか出番はないが、百人にも及ぶのではないかという群衆や兵士役が大量に出演する。
それはミュージカルのようなそれ自体が一つの役割を持っているわけではなく、まさに「背景」のような役割程度しかないのだ。
それだけの人員をただ背景としておくことを考えたら、どれだけ豪勢であるか。
また、アイーダでは軍の凱旋シーンがあるのだが、ここではバレエ団が演舞を見せる。
見せるのだが、彼らの出番はここだけなのだ。
もちろん彼らも日本で第一線で活躍するバレエ団だ。
キャストもだが、舞台装置がまた豪華なのだ。
アイーダはエジプトが舞台なのだが、セットがもはや映画のそれなのである。
遠目から見ても息をのむような精巧なセットを、使いまわすことなくシーンごとで組み替えていくのだ。
明らかに数メートルある神殿の柱や王座などなど、どれもこれもが迫力あるセットなのだ。
極めつけは、本物の馬が登場する。
生きている馬である。
ウマではなく、馬なのだ。
わずか数分だけしか出ないのに、ここまでやるのかと演出を凝る。
音楽はもちろんフルオーケストラ。最高の音色がバックグラウンドミュージックなのだ。
これだけでも1万円の価値がある。
その豪華さで圧倒されるのだ。
ちなみに、自分は今回一番後ろの席で一番高い階の席だったが、見にくいかというと全くそういうことはない。
むしろ全体を俯瞰でき、演劇のダイナミクスさに感嘆としてしまう。
オペラグラスがあれば演者の表情まで具に観察できるのでオペラグラスは必須ではあるが、初めてはむしろ一番後ろの席はありかもしれない。
4時間があっという間
しかしオペラは4時間という長丁場。
途中途中で休憩はあるが、それでも4時間は長すぎる。
そんなふうに考えていた時期が、私にもありました。
1幕はだいたい45分でしたが、あっという間に過ぎていった。
びっくりしました。自分はこの演劇の中に吸い込まれいました。
オペラは歴史のあるジャンル。
アイーダはその中でも古典の一つ。
正直、こう言う古典はあまり期待していませんでした(本日n回目の偏見)。
いわゆるギリシャ悲劇に近い、結ばれない愛のお話。
よくあるよなーと事前に調べていた時はそう思い、「まあ、経験と思って」と考えていました。
そんなふうに考えて(略
逆に言えば、それは数百年の歴史に耐えてきたシナリオ。
そんなシナリオをくべるのは、超最高級のセットとキャスト、そして音楽。
あっという間に引き込まれていきました。
また、歌唱はイタリア語(だったはず)なのでわからないのですが、
なんと、
初心者に優しい字幕仕様!!!
舞台の両脇に字幕画面があるのです!
これには感激しました。
これがあったため、物語への没入度はひとしおです。
仮に字幕がなかったとしても、バレエの演舞や最高の音楽もあり、十分に楽しめていたでしょう。
休憩時間がむしろ本番
オペラのセトリを観た時に感じたのは
「なぜ休憩時間が多くて長いんだ?」
と思った。
なんせ、各幕間に25分前後の休憩があるのだ。
長丁場の演劇でも前後半の間に10-15分程度のものなのに。
おそらく、一つは演者と演出の都合だろう。
それぞれの場面で舞台はがらりと様相を変える。その準備のためには時間が必要だろう。
また、オペラはマイクを使わない。つまり役者の地声で歌うのだ。
そんな重労働を数時間もぶっ通しで歌わせたら死んでしまうことは想像に難くない。
とまあ、始まる前はそう考えていた。
その考えが一面的であることは劇場に入ったときに理解した。
なんと劇場内にレストランとバー、軽食の売り場があるのだ!
さながらテーマパークの売店のように食事処が陣取っているのである。
考えてもみれば当然だ。
夕方から夜遅くまで、仕事終わりに4時間も飲まず食わずというのは厳しいものがある。
加えて演出のために間を空けているのであればそれを使わない理由はない。
その空いた時間で飲食物を提供するのは理にかなった戦術である。
そして、私はその戦術の術中にはまっていた……。
基本的には観光地価格ではあるが、そこまで以上にぼっている金額ではない。
むしろ食事や飲み物のクオリティを考えれば妥当な値段なのだ。良心的ともいえる。
いえないか。
そうして飲み物や食事を片手に先ほどの場面の感想を語り合う。
このシステムはオタクにも優しい。
オタクはすぐに感想がたまってしまう生き物だ。
しかしこうやって幕間があることで十分に感想を吐き出して次のシーンへと気持ちを整理しながら期待を高めることができるのだ。
まさか、幕間の休憩時間にこんな効果があるとはつゆにも思っていなかった。
ちなみに、バーではもちろんお酒が出る。観劇中は飲めないものの、アルコールが入って演劇を見るの初めての経験で、いつもとは異なる感覚の中でオペラを感じるのは本当に心地よかった。
お酒はおいしかったです。
オペラは国際テーマパークである
超一級のキャストと舞台演出、そして音楽。
濃密なシナリオと引き込まれる演出の数々。
幕間にある食事とお酒。
これはまさにテーマパークである。
それも国家レベルのテーマパークだ。
フィクションでよくスパイなどがオペラに参加するシーンがあったりする。
また、国家外交の中でオペラが利用されることもある。
オペラはまさに外交にうってつけなのだ。
オペラを公演できるのはそれだけ国力があることを示すことができる。
幕間幕間で外交官は感想を語りながら、政策を話し合うこともできる。
これ以上とない外交の場なのだ。
数百年に及ぶオペラというジャンルの中で研鑽された技術を、たった1万円程度で見ることができる。
そして、飲食物や物販でさらに利益を得ていく。
まさにテーマパーク的なビジネスモデル。
いや、テーマパーク自体がオペラなのである。
オペラ、馬鹿にしていました。
今では今度、何を見に行こうか考えるぐらいには楽しみにしています。