もるげん3分前

もるげんれえてとそのサークル「Horizont」のスペース。宣伝の他に呼んだ本や映画の感想、最近のこととかを書いていきます。pixiv→http://www.pixiv.net/member.php?id=270447、ツイッター→https://twitter.com/morghenrate

医者は「マネジメント」せざるを得ない ~『マネジメント 基本と原則』書評と感想~

医者になろうとした頃は孤独ではなかった。

何故なら共に学ぶ級友がいたから。

研修医になった時は孤独ではなかった。

何故なら仕事を共にする同輩がいたから。

院生になった今は孤独になった。

何故なら誰しもがお前は一人でできると背中を押すから。

 

どういうわけか、仕事をしているとき以上に孤独を感じるのが院生というものらしい。

なぜならば、自分を指導する教員が全く指導しないんですよね。

相談する同僚もいない。

どうすればいいかとかを示さないで「それいいね」とかそれぐらいしか言わない。

自由と言えば自由だけど、研究計画の妥当性とかも突っ込まないからあとあとガバる。

ガバって反省して、指導教員への恨みを募らせる。

だが、結局自分がちゃんと研究を管理していないことがいけないんですけどね。

管理。

マネジメント。

なので、今日はドラッカー著の「マネジメント 基本と原則」の感想を書いていこうと思います(自然な導入)。

 

最近の恨み辛みも書きしたためながら、マネジメントって大事だなあということを書いていきます。

 

amzn.asia

マネジメントは「成果主義」?

まずマネジメント全体の感想としては「1974年に最初に書かれたとは思えないほど真新しく瑞々しい本」でした。

改訂はあるけれど、今なお通用する理論を整然と記した名著でしょう。

本書では組織社会の到来によって必要になった組織の管理「マネジメント」を中心に企業の在り方やその仕事について論じています。

ところで、本書ではある点から「成果」「成果」と多く出てきます。

特に第2部「マネジメントの方法」のあたりから増えてきています。

 

組織の成果に責任を持つ者

「マネジメント 基本と原則」

 

こう見るとまるで成果主義のように見えますが、実際に本書を読んでいればそんなことはないと感じるでしょう。

なぜならば、ドラッカーは企業を「成果を為す存在」と定義しているから。

企業とは成果を出すための仕組みであるわけです。

そういう意味ではマネジメントは実に成果主義的ではなく(いい結果に終始するのではなく)、その在り方を常に問うている点では成果主義とは異なると言えそうです。

 

仕事は定義されるもの

本書を読んでいて大きな気付きだったのは、仕事とは定義されなければならないということでした。

 

「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である

「マネジメント 基本と原則」

 

特に自分は病院という公的機関に属しており、かつ役割もはっきりしています。

医業を行うということです。

けれども、ドラッカーは役割のはっきりしている公的機関こそ自身の事業が何かを定義するべきであると論じています。

医療者の中で所属する機関の定義を答えられる人はどれだけいるでしょうか。

これは単純な話ではない。現代の仕事は細分化と複雑化して、ある種の流れ作業的な側面と分業化が進んでいる。

まるで仕事はそこにあると勘違いしてしまう。

けど事業には顧客が必要であり、事業を運営するためには組織が必要です。

そしてその組織の目的には定義が必要なのだ。

この定義を、組織レベルでも自分のいる部署レベルでもすることは、かなり意義深いと感じました。

定義することによって自分のアイデンティティが定まる。

自分自身の存在感が分かれば、自然と進むべき方向が分かる。

定義することは共通の認識を生むことでもあるが、私が私として組織のどこにいるかを教えてくれるのです。

 

あくまで理論、だからこそ色あせない

本書は基本と原則です。

個別の具体的な対応などではなく、多くのサンプルから抽出された最大公約数なのです。

抽象化されたマネジメントの手法は、おそらく当分の未来まで色あせることはないでしょう。

少なくとも人類が組織を要し人が組織で働かねばならない限り。

 

この本を最初に手に取ったのは確か大学に入った直後。

正直、その時は「何を言っているのかわからん」といって最初の数ページで頓挫してしまいました。

それから十数年。仕事や研究、組織の中で誰かに仕事を割り振るような立場となり、改めて読んでみたこの本の偉大なこと。

恐らくまた数年後に読めば、違った味わいを見せてくれると思います。

組織の中で働くようになった人には、本書は大きな教訓を残してくれるでしょう。

 

医師は常にマネジメントを問われる

検索で「医師 マネジメント」で調べると出てくるのはだいたい病院経営のマネジメントについてだけ。

確かにマネジメントは組織のものではあるから病院経営に関する書籍が多いのは納得できます。

ですが、声を大にして言いたいのは

 

医師にはマネジメントが必要である

 

ということ。

それは開業医はもちろん、勤務医や研究に携わる者にとって絶対に必要です。

なぜならば、医師は一人で仕事をしていないから。

看護師や他のコメディカルと共同してチーム医療を立ち上げているし、医局という組織にも属している。

何より、患者とともに「病を治す」という事業を行うことが医業なのである。

そこにはマネジメントが必要なのである。

管理して、成果を出すことをマネジメントが得意とするなら、私たちはそのことを考える必要があるのではないでしょうか。

 

そして、医局という組織を運営することが苦手としている人が多いと思う今日この頃、とりあえずこの本を読んでみてどうすればいいかと考えてみてほしいなと。

昔は医者は医者さえできていればよかったかもしれないが、働き方改革をはじめ医師の仕事は広く世間に広まってきています。

その中では医師も「医学」というスキルだけではなく、様々なスキルを獲得していく必要があると思います。

医者は「患者を治す」だけが仕事ではない。

そう定義する医師が増えるといいなあ。

 

医師のマネジメントについてはそのうちまとめてみたいと思っています。

質問や感想などあればコメントにどうぞ。